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10周年を迎えたカゲロウプロジェクトの生みの親『じん(自然の敵P)』から聞いた、ボーカロイド作曲驚きの誕生秘話とは!?

2011年『人造エネミー』から始まった少年少女の突飛な運命を描いた楽曲シリーズ『カゲロウプロジェクト』

『カゲロウデイズ』は小説化・漫画化もされ、果てには『メカクシティアクターズ』としてアニメ化までしたほどの人気を誇る。

そんな大人気シリーズ『カゲロウプロジェクト』を生み出し、マルチメディア化の際は執筆・原作・シリーズ構成等を務め、現在では様々な分野に楽曲提供を行うじん(自然の敵P)氏に話を伺った。

【プロフィール】

[じん]

北海道利尻島出身。ボカロPだけでなく、作詞家・作曲家・小説家・脚本家・音楽プロデューサーで活躍するマルチクリエイター。

ニコニコ動画にて発表したストーリーもののボカロ楽曲『カゲロウプロジェクト』が多くのファンを引き込むきっかけとなった。以降、『カゲロウデイズ-in a daze-』を執筆。

現在はボーカロイドだけでなくTVアニメへの楽曲提供も行っている。

■    ボーカロイド楽曲を作り始めたきっかけ

ーー早速なのですが、じんさんがボカロを始めたきっかけは何ですか?

じん

父が教師だったので、北海道を転々と暮らしていました。その頃から色々音楽に影響を受け、特に中学生の頃とか学校行かず不登校みたいになりまして。そういった時に音楽を聴いて「あー、僕とおんなじ事考えてる人がこの世のどこかにいるんだなぁ」って思い、非常に助けをもらっていました。

その辺りからいつか音楽を作りたいと志すようになるんです。

それから、高校生の頃にコピーバンドみたいな感じでバンドをやっていました。その後札幌の専門学校に進学して、その時もバンドをしていました。

ただ、音楽で生きていくにも生活費は必要なので就職を目指す人が多くバンドは解散してしまいました。

僕も就職しないといけないと思っていた時に、仲の良い同級生のお兄さんから「じん君バンド解散するんだって?」と言われまして。「作曲家になりたいと思っていたんですけど難しくて……」と話したら、「ボーカロイドで曲作ったらいいんじゃない?」といった話をしてもらいました。

彼はボーカロイドで曲を作成していたので勧めてくれたのだと思いますが、僕にとって初めてボーカロイドを知るきっかけになりました。

当時はやんちゃなバンドマンでパソコンを持っていなかったので、ニコニコ動画を知らなかったんですよね。なので「米津玄師」として活動してるハチさんとか大活躍されているDECO*27さんどころ か、インターネットといった文化すら知りませんでした。

そこからボーカロイドが面白そうだと思いパソコンを使うようになり、何も知らないままボーカロイドを始めました。

ーーその方のおすすめがきっかけに?

じん

まさに人生を変えた一言って感じでしたね。

実際に彼もボカロPとして活動をされていたんです。ボカロも曲作りも何も知らない状態でしたが彼  はいろいろ教えてくれました。

僕自身固定概念が無いので、何も知らない状態が逆に良かったかも知れないですね。音楽なのに 音楽サイトではなく動画サイトに投稿するのが不思議でしたが、逆にワクワクして始められました。

■    『カゲロウプロジェクト』などのシリーズものを作ろうと思ったきっかけ

ーーそれでは、何故『カゲロウプロジェクト』のようなシリーズものを作るようになったのか教えていただきたいです。

じん

少し前に遡るのですが、中学生の頃に不登校になっていたんです。学校にもなかなか行けないし、家で本を読んだりゲームをしていたので、今思えば両親は不安だったと思うんです。

当時は星新一さんのショートショートやホラーテイストな小説を書かれる乙一さん。森見登美彦さんや伊坂幸太郎さんの作品を読んでいました。

文学少年って訳ではなかったのですが、お金を持っていないですから図書館で本を沢山借りて読んでいました。

社会人になるっていうタイミングでしていたバンドも結構オシャレな音楽をやっていたんですよね。インストゥルメンタルサウンドという歌がない楽器だけでやる音楽もやってました。海外音楽や難しい音楽を好んで聴くようになって、「やっぱこれ分かる俺すげー」みたいなことをしてましたね。

バンドをライブでやるとなってもお客さんが2人しか入らなかったんですけどね。

ーーでは、その読書や海外音楽がきっかけでストーリー性のあるものを作ろうと思ったんですか?

じん

そうですね。

実際ボーカロイドを始めようとした時、ふと思い浮かんだことがいくつかありまして。その一つが、物語みたいなもの。いつか挑戦したいと思っていました。

ただ、バンドをやってるとメンバーがいる訳ですよ。そこで「自作の設定があって〜」と話すのは恥ずかしいじゃないですか。僕が当時のバンドの人達に言い始めたら聞き流されると思うんです。 でも、せっかくボーカロイドでやるなら何も怖がることは無いと思いまして。物語に挑戦してみようかなと思いました。

ストーリー音楽をやっていたロックバンドの『ザ・フー』は、アルバム一枚でストーリーをやることを1960年〜70年辺りにやっていたんです。そのギタリストのピート・タウンゼントは、自分でお話を書いてロックオペラや演劇をやってました。

それが、今で言うと『カゲプロ』ですね。何なら僕が真似したところもあるのですが、アルバム1枚でストーリーをやるのは以前からあったことで。今の日本でもボーカロイドで頑張ればできるのではないかと思いシリーズ音楽の作成を始めました。

■    『カゲロウプロジェクト』の楽曲や小説でのキャラクターの生み出し方・意識した点

ーー『カゲロウプロジェクト』についてですが、楽曲に出てくる魅力的なキャラクター達はどのようにして生み出しているのですか?意識している点などを教えていただきたいです。

じん

そうですね。僕の中で『キャラクター』というのは色んなところに出てくる役割を担っていると思います。最初に考えるのは楽曲の時です。歌詞を書いていくときにストーリーの主観になる人。要は『その楽曲における主人公たりえる人』をどう作っていくかから始まります。

まだ当時は創作に関してすごい素人だったんですが、作り方として最初にテーマをまずは決めようってなりました。例えば、家の中で引きこもっている時に誰かが迎えに来てくれるシチュエーションがあったとします。そんな時どうやって心が動くのか、そういったものを表現したいと考えました。

そこで、まずはそんなキャラクターを考えようってなったんです。それこそ、夏の暑い日に悪夢みたいなことが起きて抜け出せない状況になったら結構怖いなって。更にはループしていくってなったら嫌だなって。じゃあ、そういうことが起こった時の主人公ってどんな人だろうって考えると、まず大人じゃないなと。頭が発達していない子供の方がより怖いだろうっていう感じで、キャラクターのコアになる部分に触れていきました。

ーーなるほど。テーマやシチュエーションからその場に合うキャラクター像をイメージしていったのですね。それでは、小説やマンガを作るにあたって作曲の時と何か違うところはありますか?

じん

KADOKAWAさんに小説や漫画を出さないかっていうお話を受けました。最初はてっきり誰かが自分の曲を書籍化してくれるのかなって思ってたんですけども。当時僕自身が音楽家を志してなれないのを喘いでいたくらいですから、当然小説文芸の業界でも必死に志して叶わない人がたくさんいるわけで。僕なんかがいきなり書いてなんとかなるものじゃないって思っていたんです。でも、編集  者さんと話を進めていくうちに「小説一巻分書いてみよう」って言われて、大変なことだとは思っていたんですけど「ダメならダメでいいや」って考えになって、その時すごいアイデアとか形にしたい気 持ちが溢れ出して「やります」って言いました。

ちょうど20歳の時だったんですけど、この時就職していまして。職場の休憩時間とかにキャラクターの深掘りをしていました。喋り口調とか性格などのより細かい設定が小説には必要だったので。昔読んだ本に出てきたあのキャラクターがイメージに近いからそういった要素を入れてみようとか、このキャラは明るい性格だけどそれ故にちょっと暴走気味なキャラクターにしてみようだとか。既存の作品やこういう風にしたいというイメージからキャラクターを作ってました。

ーーやはり曲から小説にイメージを広げる形で、魅力的なキャラクターを生み出してきたのですね。

じん

そうですね。曲の時にテーマから生まれてきたコアがあって、その後に小説を書くにあたってより深掘りして考えていくようになりました。キャラクターの性格とかが具体的に練られていったって感じです。

ーー曲も小説も漫画も制作していらっしゃいますが、当時はとても忙しかったのですか?

じん

はい。先ほども就職していたと言ったのですが、実は僕仕事をメジャーアルバムの1枚目と小説の第1巻、漫画連載の1話入るタイミングまで続けていたんですよ。当時1日2〜3時間しか寝ないで曲作って、小説書いて漫画の資料とか設定とか作って打ち合わせして、今度は仕事に行って帰ってきて曲を作って小説書いてってのを繰り返して。もう大変でしたね(笑)結構頑張っていたんじゃないかな。

ーーお話を聞いているだけでとてもご多忙な。

じん

そんな時期に生まれたキャラクター達なんですごく愛着はありますね。

ーーなるほど

■    コンテンツを制作するにあたって意識した点

ーー曲や小説、漫画など色々なコンテンツで進んでいった『カゲロウプロジェクト』ですが、制作をする上で意識した点はありますか?

じん

ぱっと思い浮かぶのは大きく分けて2つ。『カゲロウデイズ』を本にできる、漫画で掲載できるってなった瞬間。千載一遇のチャンスだと思ったんです。

当時色んな人に話を伺う機会があったんですけど、その時に「人間絶対にチャンスが何回も訪れる。そのチャンスに対してどれくらい自分が打ち込めたかで人生は決まってくると思うよ」って話していた人がいて「あっそうだな」って思いました。この瞬間にデビューになった時に絶対後悔したくないって思ったんですよね。疲れたから寝たいからやめようとか、今までの人生は仕事も学校も誰かに言われたからやっていることばっかりだなって思い返しまして。もうこれは僕の為にやろう、初めて自分の為に辛くなろうって思えて、それが僕の中では強烈な学びでした。

未だにそういう思考回路になれてよかったなって思います。だからどんなに辛くても逃げたくなかったし体調崩したり寝てない時でも、ここまでやったら誰か褒めてくれるだろうってことじゃなく後悔するのが怖かったという感覚があったからこそですかね。

学生時代に感じた「何やってんだろ」って気持ちになりたくないなって気付いてからは、『じん』っていう活動の看板を下ろすまでそういう気持ちでいようと思っています。

ーー私もそういった気持ちを感じたことがあります。大切にしていきたい考えですよね。ところで、大きく分けて2つと言っておりましたが、もう1つは何でしょうか?

じん

もう1つは、シンプルに皆さんの「楽しみに待ってる」っていう一言を言ってもらえるのが大事なので、嘘をつかないことを心がけてます。とても難しい話なんですけど、内心良くないと思っていることに綺麗なメッキをつけてまるでいい物であるかのようにして子供達に売りつけるのはしたくないんですね。

正直な話を言えば恐らくしてもバレないんですよ。子供達って色んな判断基準がないから初めてみたものをきっと良いものって思ってくれる。そういう子達が相手だから、ズルが出来る状況だからこそ絶対にズルはしてはいけないって、僕も含めスタッフ一同大事にしていることなんです。子供だからバレない、力を入れなくてもいい、適当でいいっていうものじゃないものにはしていこうって話をずっとしています。なので、もし皆さんが生きる糧になったと思ってくださるのであれば、大人達がちゃんとバカみたいに真面目にやろうってやってきたおかげであり、嘘はなかったって胸を張って言えるところなのかなって思ってます。それが大事にしていることですね。

ーーでは後悔しないため今を頑張るということ、嘘をつかないということが制作にあたって大事にしていることでよろしいでしょうか。

じん

はい。

ーーなるほど。そんな正直に一生懸命作ってきた楽曲だからこそ、今でも私たちが好きな作品なんだなっていうことを改めて実感することができました。

じん

ありがとうございます。

■    楽曲提供をする際の流れ・意識している点

ーー直近でも『魔法科高校の優等生』などのアニメに楽曲提供をしていたと思います。そこで、楽曲提供の流れや意識しているところ等を聞いていきたいのですが、まず依頼を受ける流れはどんな感じでしょうか。

じん

例えばアニメの主題歌だった場合は、まず最初に事務所の方に連絡が来るんです。楽曲を書いて貰いたい、アーティストに楽曲を提供して貰えないでしょうかってご依頼が来ます。それで「その提供していただく楽曲が次のアニメの主題歌にさせていただこうと思ってる楽曲になっています」と。  そこから、うちの事務所のスタッフの人達とか周りの音楽のサポートをしてくださってるディレクターさんだったりとかと方向性を決めていきます。

ーーそれでは楽曲提供をするにあたって、どのようなところを意識して作られているのですか。

じん

僕は音楽って基本的にメッセージを伝えていくものであったりとか、そこに何か狙いがあるべきだと思っているんです。ではアーティストの楽曲として成り立つものにすれば良いのか、アニメの主題歌として成り立つものにすれば良いのかどっちなんだろうなっていうのがすごい悩みだったんですよね。

なので、毎回それを両方とも叶えようと考えています。アーティストの「こんな歌を歌いたいっていう願い」とか「ファンに伝えたい思い」とかを受け取って。後は、どういうつもりでこの作品を書いたのかとか。アーティストがどういう気持ちで歌いたいんだろうとか。そういうのをごちゃごちゃに混ぜたりしてるとやっぱり繋がってるなって部分があるんです。

アニメのこことアーティストのここって同じことやりたいと思ってるな。この発見は理屈で説明できるところもあるし、僕が感覚として捉えてる部分もありますね。

ーー作曲と小説制作の両方を経験してきたからこそ、どちらの立場にも立って考えられる素晴らしい考え方・着眼点だと思います。結構、メッセージ性を考えて作っていらっしゃるのですね。

じん

まぁ、後は妄想することですかね。どういうのが主題歌で来たら、僕のテンションが上がるだろうみたいな。1回その作品やアーティストのファンになって考えることはあります。そこは自分でやる音楽とちょっと違う様に感じますね。別の楽しみや熱量、それを盛り込んでやってる活動かなと思います。

■    じんさんにとってのボーカロイドの魅力

ーーじんさんが思うボーカロイドの魅力について教えていただきたいと思っております。

じん

色々あるかもしれませんが、自分の歌じゃない誰かの歌を、他の人に頼むことなく自分の歌として作ることができるのは革命だなって思いました。

そもそも、この世の半分の人が女の子の声が出せないわけですから。肉体の構成上、越えるのが難しい壁っていうものがあると思うんです。それを取り払うような技術が生まれたんだなっていうのに惹かれました。まず、そこに取り憑かれたのはありますね。

後は、究極的に言えばそこに感情がないことに価値があるのだと考えています。例えば、小説とかを読んでるとそこにあるのは紙とインクなわけですよ。でも確かにその奥に潜んでいる、情熱的なものが読み取れると思います。歌なら小説とは違って歌い手の感情とか。

反面、僕はストーリー音楽をやりたかったので、あんまり感情的なものとして聞いて欲しくない瞬間もありました。ある意味聞く小説といいますか。歌う物語というかメロディーのついた物語のような、そういったものにしたかったっていうのはありました。

当時、ボカロがシンセサイザーと人間の中間みたいなあり方をしてくれてたからこそトライできたと思いますね。もしボカロがなかったら物語音楽とかシリーズものをやりたいと思っても途中で「やっぱりやめよ」ってなってたかもしれない。ボカロのそうゆうところを非常に良い部分として魅力的に思ってます。

もう超える超えないとかじゃない。人間の声でも絶対にたどり着けないものがあるなって。

ーーありがとうございます。

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BizLA(ビズラ)

日本工学院専門学校マンガ・アニメーション科ビジネスコースのことです。 現在のチームは「Planners LA」です、

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