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アニメ業界の舞台裏、クリエイターのリアルと情熱!

取材者(以下、葉月):1つ目の質問です。アニメ業界に入ったきっかけとキャリアを教えてください。

臺野:アニメ業界に入ったきっかけは、正直に言うとたまたまです。当時は皆さんと同じように専門学校に通っていたんですけど、「HUMAN」というゲームソフトメーカーが運営するゲームスクールに通っていました。そこでゲームクリエイターになりたかったのでゲーム業界に就職活動していたんですけど、不真面目な学生だったので30社ぐらい受けましたが、全部落ちました(笑)。

当時はインターネットもなかったので、就職情報誌を買い漁っている中で、たまたまアニメーション会社の募集を見つけました。職種は「制作進行」で、未経験者歓迎と書いてありました。免許も持っていたので、「まあ、運転には自信あるし」と軽いノリで応募しました。そしたら、受かっちゃったんですよ。トントン拍子で受かりました(笑)。

当時、3DCGもアニメに少しずつ導入されてきていたので、面接の時に「3Dできるの?」と聞かれて、多少できますと言ったら「じゃあ、制作進行をやりながら3Dもやってみて」と軽いノリで言われましたよ(笑)。

葉月:キビしくないですか?

臺野:キビしいですよね。でも、何も知らない状態で入ったので、「できるんじゃないですかね」と軽いノリで言っちゃいました。そうしたら、「じゃあ頑張ってやってみようか」と言われてしまい・・・。

車の運転には自信がありました。普段から東京周辺で車を乗り回していたので道も分かっていたし、「東京の道だったら全部頭に入ってます」と言ったら、「じゃあ雇うよ」という感じでした。すごく軽いノリでアニメーション業界に入りました。当時から人手が足りてない状況なんですよ・・・この業界。

制作進行としては、恥ずかしいお話ですが3ヶ月しかやっていません。当時のアニメーション会社は待遇がひどく、徹夜が当たり前で、ほとんど家に帰れない状況でしたね。3ヶ月というのは一話分をフルで受け持った期間です。

葉月:なるほど、一話分はフルで受け持ったんですね。

臺野:そうです、責任感はあったので(笑)。最初の担当作品は「セイバーマリオネットJ」でした。ここでは当時の制作現場の詳細はオフレコにしておきますが、その時の演出の人が「GONZO」に拘束されているフリーランスの方で、その演出さんとのやり取りのために「GONZO」に行くことがありました。

「GONZO」は当時のアニメーション会社の環境と違って綺麗で、ゲーム会社のようにパソコンが並んでいるのを見て、「この会社いいな」と思いましたね。制作進行ではなく、グラフィッカーを目指していたこともあり、GONZO側の制作に「入る余地ある?」と聞いたら、「とりあえず社長に会ってみる?」と言われました。

葉月:そんなにフランクにいけたんですか?

臺野:当時の話ですからね(笑)。社長と会って、履歴書を持ってきなよと言われて、社長から「制作がやりたいの?」と聞かれて、「いや、制作じゃないんですよ・・・」と答えてから、PCを使用できる旨を伝えたら、「じゃあ撮影だね」と言われて、GONZOに入り仕上と撮影に配属されました。

そこから撮影のキャリアがスタートし、セガサターンのゲームで撮影監督としてデビューしました。

実際の経験談

葉月:アニメ制作現場での印象に残っている話をお聞かせください。

臺野:いっぱいあります。一番印象に残っているのは、自分の知識がなさすぎたことです。今、授業で教えている内容は、業界で「これやっとかなきゃヤバい」と感じたことをやっています。業界の人たちは、映像の専門用語を当たり前のように持っているので、知識がないと会話ができません。カメラワークやレンズのことなど、チンプンカンプンな状態から勉強しながら仕事をしていました。

技術的な挑戦としては、撮影が一番大きかったです。GONZOが目指していたのは、実写に近づける見せ方で、カメラを意識し、パースやレンズ効果を取り入れていました。どうにもならないものは実写で撮っていました。

葉月:アニメを実写で撮っていたんですか?

臺野:そうです。当時の技術では3Dやプラグインで表現できないものが多かったので、手描きや実写で撮影していました。例えば、タバコの煙を黒いラシャ紙の前でカメラで撮影し、それをデジタルで合成したりしていました。炎や煙、水滴なども実物を使って撮影していました。

読者に伝えたいアニメ会社での学び

葉月:アニメ制作を通じて得た人生の教訓や哲学はありますか?

臺野:物を知らないことの重要性です。映像のことだけでなく、いろんなものを見なければなりません。特にロケハン(ロケーションハンティング)で実際のものを見ることが大事です。実際のものがどうなっているかを調べることが重要です。自然物や建物、空気感などを外に出て観察しなければ、リアルなものは作れません。

葉月:確かに、聞くだけなのと体感するのは全く違いますよね。

臺野:そうです。実際に体感することが重要です。例えば、マクロスのムービーを作る際に、砂漠のシーンのためにラスベガスの砂漠地帯に行きました。乾燥地帯の気温や陽炎の出方などを体感して作ることで、リアルな映像を作ることができました。

これからのアニメ業界へ向けて

葉月:業界の未来への期待をお聞かせください。

臺野:クリエイターへの待遇が良くなったことが嬉しいです。新人でも食べていける形になってきているので、続けていってほしいです。特に監督クラスにもっとスポットを当てて、有名人扱いしてもらいたいです。業界の中で名の通っている人たちに脚光を当てて、将来的にこの業界を目指す人たちが増えてほしいです。

葉月:たしかに世間的に有名な監督って限られてますよね。

臺野:そうです。有名な監督さんは数人しか出てこないですが、業界の中では名の通っている人がたくさんいます。もっと脚光を浴びる人たちが増えてほしいです。この業界の未来は明るい兆しが見えると思います。

葉月:最後に、クリエイターへのメッセージをお願いします。

臺野:「作ろうぜ」。誰にも負けない作品を作ろうぜ。こだわり抜いた作品を作ろうぜ。キャラ萌えや声優も大事ですが、作品全体のバランスが大事です。アニメを作る現場は楽しい場所なんだということを感じてほしいです。

楽しんで作ることが重要だと思います。

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