この記事の目的
今回の記事は、漫画を描き始める方や既に描いている方に向けて、漫画の描き方に関する情報をお届けします。漫画家のまつやま登先生にインタビューし、漫画を描くためのコツや漫画業界で役立つアドバイスを伺しました。この記事を通して主にこれから漫画を描き始めようと考えている方を対象に何でまず描き始めればいいのかという点から描く時のネタ集めの話など幅広く知ることができます。
___まずは先生の経歴を教えてください。
まつやま先生(以下敬称略)¦東京都青梅市出身で、花の47年世代に産まれました。(マツコデラックスや木村拓哉と同世代)。小学校5、6年生の頃、竹本泉先生の「あおいちゃんパニック」に夢中になり、漫画家を目指すようになりました。中学時代から同人誌活動を始め、高校時代には少女漫画雑誌への投稿で初めて入選することができました。
高校時代にはドラクエ同人誌に熱中し、友人たちとゲームの同人誌を制作する中で、デビューのきっかけを掴みました。同人イベントで現在ポケモンなどのキャラクターデザインをしている、ありがひとしさんと知り合い、仲良くなりました。同じ年ながら既に当時のエニックスのドラクエ攻略本のカットなどを描いていたありがさんの紹介で、エニックスに作品を持ち込みましたが、画力不足を理由に断られました。しかし、もう一つの編集プロダクションを紹介され、高校3年生の終わり頃にありがさん達と放課後に編集プロダクションに通い、スーパーマリオの攻略本のマップをトレースするアルバイトを始めました。その頃ゲーム漫画のアンソロジーが流行していた時期で、自分の絵を見せたところ、ちょうど双葉社から出るファミコン4コマ漫画の仕事をもらえるようになったという、これがデビューまでの経緯です。
ともかく、私の人生において「ありがひとし」さんは欠かせない存在です。高校時代に知り合い、同人活動を通じて親しくなりました。現在でも家族ぐるみの付き合いを続けており、家も近く、子供の年齢も近いことから、頻繁に連絡を取り合っています。
___現在の役職や活動内容について教えてください。
まつやま¦現在は専門学校の講師として漫画を教えつつ、自身もメインは子供向けの漫画を制作しています。最近では「カービィ」の漫画や「マインクラフト」のゲームブックのイラストを手がけています。また、広告漫画や学習漫画など、幅広いジャンルで活動しています。
___続いて漫画の描き方についてお伺いしたいのですが、キャラクターの表情の描き方のコツとかがあれば教えていただきたいです。
まつやま¦作家さんによってだと思うんですが、私の場合本当に子供向けが多いから、一目見てわかるぐらいのオーバーな表情を書くにはなるべく気をつけていてます。最近うちの学校ではやってないけど、入学してきた時に最初にやる時の表情の付け方で、記号でやりましょうみたいな。
笑ってたらこうだよねとか、本当に困った顔だとこういう感じみたいなとか、絵文字が結構参考になるかと思います!
___先生が漫画を描くときのプロセスについて教えてください。
まつやま¦漫画を描く上で最も大切なのは資料を集めることです。デッサンも重要ですが、見て描ける力が大切です。また、時間管理も重要で、効率的に作業を進めるために時給換算で作業を行うことを心がけています。スピードを重視しつつも、必要なことはその形をうまく捉えられる能力を養うことが重要です。
___影響を受けたアーティストや作家さんがいれば教えてください。
まつやま¦竹本泉先生です。竹本泉先生の「あおいちゃんパニック!」それと、キャプテン翼。キャプテン翼めちゃくちゃハマったんでペンネームの「まつやま」もそこから来ています(笑 あとドラゴンボールもハマったんで、もう当時の黄金時代みんなハマったって感じで。
その頃にドラゴンボールの絵柄を真似するようになって、結構シャープな絵柄になった時期がありました。また結局戻ったんだけど。
私は、竹本泉先生、高橋陽一先生、鳥山明先生ですね。
___因みになんですけどどこが具体的に影響を受けたとかあれば教えてください。
まつやま¦絵柄の影響ですかね。
鳥山先生はもうね、背景とかなるべくトーンを使わないで仕上げているので、自分もトーンを使わないで描こうというのはめちゃめちゃ影響を受けたかもしれない。
あと細かいというか、めっちゃ描きこまなくても背景がすごい綺麗に描けてるっていうのは、鳥山先生の影響が大きかったです。
で、多分竹本泉先生もそういう感じなんで、やっぱり私、線が少ない絵が多分合ってたと思うので、そういうところかな。
___漫画制作をするにあたって苦労した経験があれば教えてください。
まつやま¦あまりないです。
割と気楽にやっちゃってるタイプなんですよ。
ただ、この前ちょっと描いた原爆をテーマにした話がちょっと大人向けだったので、普段描かない人間とかを描いていたので、当時の時代考証とか資料を探すのがちょっと大変だったかな。
なんかうっかりとしたことも描けないし、ライトな感じはないので、気を使って描く漫画はいろいろ勉強になりました!
でも最近の苦労話って言えば、私の描いている子供向け漫画界隈でも、私デビューしたのはそれこそもう19歳の頃なんで、その頃描いていた任天堂の漫画と今の任天堂の漫画ってやっぱり全然違うんで、昔は描けたネタなのに今はダメみたいなのがすごく多いんですよね。
カービィの漫画とかでも食べ物出てくると結構、食べ物で遊んじゃダメみたいなのがあるんで、だからじゃあ他のテーマにしましょうかみたいな、結局ボツですよね。そういうのが結構あるんで、昔は通ったけど今はダメがやっぱり多いのはちょっと悩みどころかなっていう感じがしますね。
__結構いろいろと今のほうが規制とかかかってて難しいこと多いですよね…
まつやま先生がそう言う苦労とかを乗り越える方法とか何かアドバイスとかあればお願いします。
まつやま¦気持ちの切り替えしかないよね。くよくしてても仕方ないからね。
特に子供向けジャンルをやる人はいくつかネタの予備の弾を持っておいた方がいいよ。メインがダメだということも結構あるので、2点3点考えておくとダメージも少ないです。
担当さんにもちょっと悩んでるようなふりをしつつ、ちょっと遅れて提出するといいよ。さらっと出すとなんかこいつできるなって思われちゃうから、私はちょっと大変だったんだよぐらいの感じで、次のネタを出してあげるといいかなと思います。
なので、気持ちの切り替えを大事に。
___なるほど!参考になります。次なんですけど、まつやま先生が使用しているデジタルツールやソフトウェアを教えてください。また、どのように活用しているのかも併せてお願いします。
まつやま¦ClipStudioPaintと、一応Photoshop。学校で使っているものでいいです。クリスタとPhotoshopと、あと家では液タブ、私Macです。Macで液タブ使ってますね。
外でやるときはもうiPadだけオンリーって感じですね。大体みんなが使っているようなものですね。
デジタルツールは常に更新されるため、学校で教わっていることだけでなく、常に情報を入手することが重要ですね。Twitterなどで発信されている最新情報をチェックし、新しい機能やツールを活用することで、効率的な制作が可能になります。また、周りに聞ける人がいることも重要で、そうした繋がりを持っておくことを勧めています。情報収集が一番結局大事だよ。
___因みになんですけど、初心者さんにおすすめのツールとかあります?
まつやま¦初心者にはアイビスペイントがおすすめですね。プロを目指すならClipStudioPaintが最適です。
___漫画制作におけるインスピレーションとかの話なんですけど、日常生活だったり他メディアからどのようにしてインスピレーションを得ているかをお聞きできればなと思うんですけど。
まつやま¦私日常生活でこれネタになるかもなって思うことが結構あります。一応お母さんもやってるので、家の中のこととかやりつつネタについて考えてますね。
本当に些細なことでもこれネタになるかもとかいうのがあるので、常にアンテナ貼れてるといいかなって感じがする。
特に若いうちって結構そういうのも覚えてられるし、違うところで着眼点もあるのかなって感じがする。
アンテナ貼って面白そうと思うことがあったらよくメモしてって言ってるんだけど、最近はスマホがあるから、メモアプリとかにちょっと書き込んでおくといいかも。
あと、映画も見るんですけど、映画自体は単に自分でエンターテイメントとして「楽しかった」で終わってるところだけど、最近お笑いとか観ていてようやくわかったんだけど、お笑い芸人ってネタ作るのうまいなって思いました!「すごいちゃんと話まとまってんじゃん」みたいなネタとかもあるから、ギャグとかやりたいんだったらやっぱりお笑い見てもいいかもしれないと思いました。
そんな感じで常日頃からアンテナ貼っておくといいかなって。難しいけどね。
面白いと思ったことは書き留めておけばいいと思います。
___なるほど!まつやま先生のウェブサイト見させていただいたんですけど、芸人さん!?ってびっくりしました!因みにここからの流れでもう一つなんですけど、インスピレーションを得るために心がけていることとかがあれば教えてください。
まつやま¦同じ場所にいても多分インスピレーションって湧かないと思うから、私はどっか出かけるのが好きなので、もし家にいても何も思い浮かばないなとかいうのがあったらどんどん出かければいいと思います。
外へ出てもいいし、家の中でも違う場所に行ってみるとか、その場所に留まらないのが一番かなと思います。
___将来の展望や目標について教えてください。
まつやま¦もうね、私たちいい歳になっているので、とりあえず生きながらえていればいいかなというか、人生折り返ししちゃってるんで、今後は、無理のない程度に自分の今やっときたいことやっておこうかなって最近思っています。本当に人間いつ死ぬかわかんないからっていうのがあって、食べたいものはなるべく食べるようにしつつ、でも食べ過ぎるのもよくないからとかあるし、あと行きたいところは行った方がいいかなって思ってるのと、会いたい人に会っといた方がいいかなっていうのはあります。
でも私、最近になってすごく英語が必要だということがわかってきて、今になって、ちょっと英語で話せるぐらいになりたいなというのがあるんですよ。
なので4月から、オンライン英会話を始めました。
中学の時に本当に英語苦手で全然基礎もできてないんですけど。
でもね、英語で留学生とかと話しできたらいいじゃないですか。
お互い日本語でやるよりもというのがあるから、だから将来の私の展望としては、英語で授業を教えられるようになれるといいなっていうのが私の今の目標です。
あとは悔いなく生きる。
もうそういう感じに入ってきてるんで、漫画の話じゃないんですけど(笑
漫画については、何が当たるか本当わかんないから。
やなせたかし先生みたいにね、年取ってから当たるかもしれないし、このまま安定していくだけかもしれないし、とりあえず漫画で今仕事もらえてるから、この状態を保ちつつ、当たる時がきたらそれはそれでめでたいということで。そうでなければ安定したまま、今みたいな感じの人生を送っていければいいかなというのが私の今後の目標です。
___漫画家を目指す読者の方にメッセージとかが何かあれば一言お願いしてもいいでしょうか。
まつやま¦漫画家って楽しいと思います。
自分がなりたくてなるので楽しい。なりたい職業に就けたら大体誰でも楽しいと思うんだけど、好きな仕事に就いたがゆえの嫌な思いをすることとかもあると思うんです。これもちょっと難しいんだけど、とにかくメンタルを強く持ってくださいってこと。
何事にもなんだけど、やっぱりメンタルが一番大事なんで、それで結構病んじゃう人もいるから、周りの言ってることをあんまり気にしないでいけるといいかな、
批判的なことを目にしちゃうと、気にはしちゃうけど、すぐに切り替えられる気持ちが持てるといいんじゃないかなと思います。
「メンタル強く持って」というのが私の一言ですかね。
___最後なんですけど、現在の漫画業界について、若手の漫画家に伝えたいこととかがあればお願いします。
まつやま¦今って本当に、私たちがデビューした時と違って、デビューする方法はすごくいっぱいあるんで、その中で生き残りが大変だと思うんですよね。だから、私なんか正直絵も上手くはないし、特別な特徴があるわけでもないんだけど、やってこれてるのは、まずは誠意を持って対応できるってことかな、相手に対して。締め切りをしっかり守るとか、そういうことも大事なんだけど、それプラス、子供向け?なら子供向けっていう、1個だけでもいいから、自分の武器になるものがあるといいかなって思います。
たぶん、絵が上手くて漫画を描けるっていう人はすごくいっぱいいると思うし、何なら最近原作付きも結構増えてきちゃったから、自分で全て漫画を描くっていうのはなくなってきてると思うので、アニメ化する漫画とかまではいかなくても、漫画で食べていくんだったら、私はこれなら絶対私にお任せくださいっていうのが、1つ持てるといいかなって思いますね。得意な方面だけいける。それプラス他の仕事やっててもいいけど、一筋だけは外さないようにできる武器を作ってもらうといいかなと思います。
___本日はお忙しい中お時間いただきほんとにありがとうございました。
今回のインタビューを通して
今回まつやま登先生にインタビューさせていただき、初心者ならまずはアイビスペイント、本気でプロを目指すなら、クリスタなどというツール知識や、ネタ集めに困ったら外に出たりなどのアクションを起こすとよいという貴重なお話を伺うことができました。
また、苦労したお話から担当さんがついたらその担当さんとどうすればうまく付き合っていけるかのポイントの1つもお伺いでき、とても参考になるお話ばかり。きっと読者の皆様にとって、これから漫画を描いていくうえでの貴重なお話になるようなインタビュー記事を作成できたのではないかと考えています。
終始笑いが絶えなくて、とても明るく自然体でたくさんのお話をさせていただきました。面白いお話から、真面目なお話までたくさんの貴重なお話ありがとうございました!
最後にまつやま登先生が旦那さんの神楽つな先生と共作で描かれた「脳トレクイズマインクラフトまちがいさがしサバイバル」もとても面白くてかわいいイラストがてんこ盛りなので、是非お買い求めください!!