クリエイターに求めるのはOSの知識!?
納期が厳しい案件をあえて受ける理由は??
こだわっても誰も見てくれない?本当に必要なのは・・・
日常系から戦闘系まで、様々なジャンルを取り扱う旭プロダクションだからこそわかるジャンルを超えて通用する「普遍的なスキル」。
飾らない言葉でプロの厳しさと、それを乗り越えた先にある楽しさを、忖度なしの直球で語っていただきました。
株式会社旭プロダクション
1973年、撮影専門スタジオ兼PRムービー会社として設立。
[代表作]
- 『魔法少女にあこがれて』(2Dワーク、キャラクターデザイン、モニターワーク、制作、撮影、演出、特殊効果、監督、編集)
- 『弱虫ペダル』(2Dワーク、3DCGI、撮影、特殊効果)
- 『ソードアート・オンライン』(撮影、特殊効果)
田中唯さん
技術部撮影部撮影課課長。日本工学院総合アニメーション科(SA)3期卒業生。
本田拓望さん
管理本部人事総務部システム班マネージャー(課長)。日本工学院総合アニメーション科(SA)3期卒業生。
アニメ業界で必要なものとは?
--これからアニメ業界に入るにあたって、どのジャンルにも共通してもっておくべき意識やスキルは何かありますか?
田中唯さん(以下、田中)
アニメ好きじゃないと、まず持たない。あとは観る側から作り手側へのシフトができないと結構きついかもしれません。アニメオタクのままだと難しいのはある。ただ突き詰めたアニメオタクだったら逆にいけるかもしれない。究極的な作画オタクだったりかは結構伸びたりする。
最近は全然知識がゼロでも結構会社が教えてくれることが増えて、好きだったら伸びる要素はありますね。あと話せないと結構厳しいのはあります。
本田拓望さん(以下、本田)
コミュニケーション能力は絶対ですね。
田中
うちの撮影はサービス業であるとの気持ちで撮影してるのは結構ありますね。クライアントに対してこういうサービスをしてるっていう認識で仕事をしている。すると喋りができないと結構厳しかったりはします。人懐っこい方がみんな教えてくれるので、喋ってコミュニケーションができればやっぱり得かなっていうのはあります。いろいろ聞ける人がやっぱり伸びていくのは、長年やってて感じます。あとはアニメが好きであることは、どこに行っても通用する条件とは思います。
本田
バックオフィスも然りだね。結局アニメが好きであることが重要ですね。
田中
営業もシステムもアニメ好きな人を採用していますね。アニメを売る商売なのに、営業がアニメ興味なかったら厳しいよね。
本田
バックオフィスもそうだけど、アニメが好きでないとね。アニメが好きな人たちが集まってることが重要になってくるんじゃないかな。
田中
あと、逆に好きじゃなくても淡々と見れる人。例えばこのタイトルがお仕事で来ますという時に、絶対原作全部読む。ラノベとかも全部あるやつは読む。読まないと予算も規模感も内容もわからない。学生の時だったらね、登場人物に感情移入できるかもしれないけども、もう親の目線になって読んでるからね。基本的には来た作品に関しては原作があれば確実に全部読む。これはもう仕事として。
本田
他の会社のアニメもほとんど観ます。
田中
観るね。例えば処理の重さであったりとか、どのディレクターだったらこの作品ハマって、より良いものできるかというのを知るために淡々と見るようにはしてる。淡々と原作を読んだり出来るのも、必要な能力だと思います。
すごいアニメ好きか、どんな状況でも仕事としてアニメやサブカルを受け入れることが可能かっていう能力は必要ですね。だからアニメとか漫画、サブカルコンテンツが好きなら、好きを突き詰めた方が良い。浅い好きが一番ダメです。
本田
そうだね。「観てないっす」みたいな感じだと、やっぱり遅れちゃいますね。
田中
「例えば鬼滅でやってたここのカットを今うちにある技術だと何で再現しようか?」みたいな話をしてる時に乗っかれないのはきつい。あと古い作品を見てないのもきつい。
演出さんとか監督がおじさんになってきてるんで、俺が若い頃だと散々言われたのが「ブレードランナーの後処理を再現してほしい」みたいなね。昔の映画でもうみんな「ブレードランナー」とか知らないと思うけど。
逆に今なら20年ぐらい前のアニメとか映画で出てきた処理を結構言いたがる。例えば「魔法少女まどか☆マギカ」で出てきたあの処理がとか、「コードギアス」で出てきたあれとかいう単語が出てくる可能性がある。トレンドになってる作品や有名タイトルは興味なくても見とかないと仕事にならないというのはありますね。
本田
なので幅広く見た方がいいんじゃないでしょうか。
田中
特定のジャンルが嫌いとかだとやっぱちょっと損をするよね。
なるべく見といた方がいいのは事実だね。
いまクリエイターに求められていること
--いまクリエイターに求められる技術は変化しているのでしょうか?
田中
ツールで言えば、基本的には今のところ After Effects を使うのは変わらないです。でも、絶対に必要なのはOSに対する知識ですね。例えば Windows のショートカットとか、知識があればあるほどいいと思いますね。この辺りを知ってるだけで作業速度が圧倒的に変わります。あとハードウェアの知識も必要だよね。
本田
自分の仕事道具に対して理解すること、普通のことを意外と忘れがちですね。
ソフトは料理で言えば包丁だし、大工であればトンカチみたいなものだから、それを自分で手入れしないといけないと思う。「なんだかよくわかりませんけど使ってます」という人も多いけれど、そんな料理人とか大工はいないんだよね。
田中
いたとしたら信用はできないよね。
本田
だから自分の仕事道具であることに対して、真剣に理解したり、こだわりを持つのが本当は必要なのかな。
田中
ソフトウェアやハードウェアの知識は、本当に仕事で日々触れるものですから。特に映像とか3D 、撮影の業界は基本的にはパソコンを使った作業がメインなので、ソフトウェアの知識、 OSの知識、ハードウェアの知識は基本的に いくらあっても良いね。自作でパソコンを組めて、 OS とかソフトウェアも自分でインストールできるぐらいだとありがたい。
本田
あと意外と多いですが、英語アレルギーがあれば克服しておいて欲しい。 「え、英語ですか? 」みたいなのはなるべく取っ払って欲しい。
田中
嫌でも英語文献翻訳して調べることになるからね。
本田
今の時代、翻訳だって AIを使えば結構簡単にできるし、そこまで怖がるものじゃない。 システムでは海外の契約書を読み込んだり、向こうの人と直接会話しましょうとか言われることもあるからね。あと意外と共通言語で、片言でもなんとか喋れる。「無理です」って言うと、そこで機会もなくなっちゃう。
田中
機会損失は大きいね。
俺は若いころ、よくわかんなくても「とりあえずできます」って言って、後で頭抱えることも多かったです。
本田
そうそう。とりあえず実践するか、みたいな感じがあるからね。
--今も昔も、チャレンジする精神は大事ということですか?
田中
そうでないと仕事なくなっちゃうんだよね。なかなか難しい話ではあるけれど。
本田
これはバックオフィスだろうとフロントだろうとあんまり変わらないと思いますね。「チャレンジ精神」っていう言い方は根性論みたいで嫌なんだけど、やっぱ必要だよねって。 前へ前へっていう姿勢は、結構強いんじゃないかな。
田中
まとめると、やはりハードウェアの知識は必要。ソフトウェアの知識も必要だし、OSの知識も必要。そのうえでAfter EffectsやPhotoshop、Microsoft Officeやスプレッドシートとかの知識を、どんどん積み重ねていくといいのかなと思います。
今は自分で動画を作ってる人も多いから、そこから編集ソフトの知識を広げて、持てる武器をどんどん増やしていくといいなと思ってます。
ハードウェアとOSの知識がしっかりしていれば、他のソフトの知識も連動してちゃんと蓄積できると思います。
本田
本当にそうだと思います。むしろそこを重視して、基礎力を高めて欲しいですね。一時期、新入社員研修やったらパソコン持っているのが50人中1人とかあって、正直かなり焦りました。
旭プロが様々なジャンルの作品を制作している秘訣とは
--旭プロ様が制作で様々なジャンルを取り上げている理由はなんですか?
田中
仕事が来るからですね。もう少し深掘りすると「旭プロダクション」の良さは、キャパシティがあるのがすごくあります。人数が非常に多い撮影会社なので、スケールメリットを活かした戦い方が他社にはない武器としてできている。その恩恵としていろんな作品が持ち込まれます。
それはなぜかというと、人数が多いと1 日にできるキャパシティが多くて、そこでの信頼性が高い。そこで。いろんな方面からいろんな仕事が来ます。
そのうえ仕事ができるディレクターが多いから、長年やっていくうちに、いろんなジャンルの作品が来てるのが正直なところです。
本田
やはりうちのスケールが大きいというのはあるし、基礎的な部分を重視してるから全員が得意不得意はあるんだけど基礎はもっている。 全ジャンル対応できるというレンジが広い。
他社だと2ラインしかないとか聞きます。得意なものが決まってて、他は出来ないみたいな話はよく聞きます。
田中
あとは人数が多いので、人を流動的に活用できます。うちは人数も本数も多いので、2年目でも撮影をやらせようみたいな話は結構気軽にできます。やる気さえあれば若くてもディレクター や 撮影監督にすぐなれますというのは、結構売りだったりします。
誰にでもチャンスがあることでいろんな作品ができる。人数が多いメリットをその方向性で生かせてると思います。
本田
作画も、原画に上がる速度は速いですね。制作でもデスクになる速度は他に比べて早い。だから出世までの道が明確に速いっていうのがうちのいいところですね。
--「スケジュールが厳しい仕事が舞い込んでくる」と話していましたが、そうした仕事を断ることはしないんですか?
田中
間に合わせることが出来るなら断る必要はないと思っています。バランス調整は慎重にはやってますね。 いい仕事と悪い仕事を織り交ぜながらやるみたいな感じです。
アニメは基本的に原価を良くするなら日数を短くするのが最強の手段になる。そのうえで、なんでうちにその仕事を任せるかというと「人数が多いから一気に投下して品質を下げずに納品できる」。そこで戦ってるところがあるからだね。
普通の会社だったら出来ないスケジュールの作品のクオリティを担保して納品できるのはうちの強みだったりします。
作品制作におけるこだわりとは
--作品を作る上で大切にしていることはなんですか?
田中
学生向きの答えではないかもしれませんが、速度かな。速ければ速いほどクリエイターのやりたい時間が捻出できるので、玄人向けには速度を重視して仕事をしていきたい。
本田
撮影なんかがいい例ですけれど、入社 1年目だろうと 10年目だろうとハイスペックのエース機と呼ばれている PC を渡してるんですよね。
なぜかというと、新人でもベテランでも意味は変わりますが、「速度」が大事だから。
誰しもが全員同じマシンのスペックで統一している。速ければ速いほど、その分チャレンジすることもできるし、失敗もできる。
田中
手数が多い方が間違いなく品質上がる。それは間違いない。
本田
一回終わらせてから、試行回数を増やしていきたいですよね。そうしたブラッシュアップを学生のうちから身につけておくとすごく強いんじゃないかな? 何よりそれはつまり突き詰めれば「速さ」だね。
田中
本当に速度ってすごく大切で、例えば若い時に 手の速さが2倍違うと、 1年間で触れるカット数が 5000カットか1万カットになる。やっぱり差が出るんだよ。現場で働いた時の 5000カット差は、経験値にするとだいぶ違っている。とにかく速くできればできるほど経験が積めて、基礎力がどんどん上がっていく。 ベースが高いと、撮影の品質が上がっていく。商業用のテレビアニメを作っていく勝負では、やっぱり手数は多い方がいい。
本田
夢はないけど、本当のリアルはたぶん速度なんだろうね。
旭プロの目指す今後の姿とは
--旭プロ様の今後の目標は何ですか?
田中
スタジオ内でみんなで夢を語って、今後10年に向けてスタジオとワークフローとシステムの近代化改修をしたい。品質に関しては、すごいよくできてる撮影会社さんが増えたので、負けないようにしたい。
本田
リアルな話をすればやはりお金。会社が大きくなって稼げる額が増えていけば、みんなに還元される額が増えていきますからね。
田中
売上的にはガッツリ企画を自由にやるのは結構大切ですね。
本田
企画の広げかたとかが得意な人がちゃんと入ってくるといいと思いますね。
※現実に則した上で広げるのが得意な人をイメージして発言しています。
--スタジオの環境やワークフローなどで考えていることはありますか?
田中
オフィスが少し古くなってきてるので、オフィスを一新したい。ワークフローに関しては納品とかの人間が触るところを少し減らしてみたいなと思っています。
自動納品とまではいかないものの、物入れの自動化とか。人間が単純労働として触るところを根本的に減らしていきたい。考えるところはきちんとディレクターたちがやるけれど、例えばリテイクや差し替えの自動化、近代的なワークフローをやっていきたいです。
本田
普通の企業で言うと。自動化はいわゆる DX みたいなことじゃない?
田中
そうですね。たぶん若い人から見たら無駄だなって思うことはいっぱいあると思います。例えば、この会議何のためにやってんだろう?みたいな。ただ、おっさんになってくると、これは無駄だって思うことが徐々に減ってきてる気がします。
俺らができなくなったら、もう少し若い世代にきちんとバトンタッチしていこうとは思ってる。とにかくこの無駄を無駄と思える感性のうちに何とかするのを大切にしていきたい。
本田
毎年毎年やりすぎてね、業務改善に手つけすぎて訳分かんなくなることはありますよね。先進的なこととかもどんどんチャレンジしているけど、どこが本当の最新なのか、本当にしてよかったとか結構悩んじゃうから、若いうちの感性は大事ですよね。
数年後とかに若いスタッフがPCで撮影するのは無駄っすよって言ってくる可能性あるからね。それを受け付けられるかどうか。
田中
古い知識のままだとスタジオ自体が停滞しかねない。とにかく技術の取り入れをやめるのはかなり危ない。
アニメの情報しかりですね。アニメも最新アニメを見ないとトレンドが分かんなくなって。新アニメの最新技術みたいなのは、やはり入手しておかないと撮り方がだんだん古くなっています。技術も然りだよね。新しく出るパソコンのスペックはどうだろうとか、ゲーム業界とかパチンコ業界とか、映像とかサブカルチャーに対する業界に対しての知識はとにかく最新情報を得といた方がいい。
本田
ていうかね、オタクであるべきだね。本当に誇っていいほどオタクであるべきだと思いますね。そこを斜に構えてる人が学生とかだと多いんだけど、そんなこと言ってる場合じゃないですから。全てにおいて全部満遍なく、好き嫌いなく食うべきだね。
例えば今だと業界内でも多いんだけど、AI をめちゃくちゃ押し付けてる人たちもいるけど、AI以外の知識も前提として取るべきだね。それだけだと上半身だけ鍛えてるジムに行ってる人みたいな。
バランスが悪くなると結局は稼げなくなります。これはリアルな話ですよね。
まとめ
アニメが好きなこと。話せること。道具を知ること。チャレンジをやめないこと。
どれも言葉にすれば当たり前に聞こえるが、それを「仕事として」徹底できるかどうか――そこにプロとしての差が生まれるのだと、改めて気づかせていただきました。
旭プロダクションが様々なジャンルを手がけ、厳しいスケジュールをも受け切れるのは、「基礎を持った人間が、前へ前へと進もうとしている」からこそ。その土台があるからこそ、スケールが本当の強みに変わるのだということを、率直な言葉の数々から感じ取っていただけたのではないでしょうか。
飾らない言葉の奥に、確かな自信と次世代への本気の期待が詰まったインタビューとなりました。