今回、私が紹介する作品は『Hello world』というグラフィニカが制作したオリジナルSF青春ラブストーリーだ。
監督は「時をかける少女」や「サマーウォーズ」の助監督、「劇場版ソードアート・オンライン-オーディナル・スケール-」の監督を務めた、今注目されている人物の1人である伊藤智彦。脚本に「正解するカド」を執筆した野﨑まど、キャラクターデザインに「けいおん」などのキャラクターデザインをしている堀口悠紀子をおくなど超精鋭メンバーで作られた。
内容は、高校生の主人公・直美が未来から来た自分であるナオミとタッグを組んで、将来恋人になるであろう少女・瑠璃を救う物語。
映像を見て思った感想は、細田監督を想起させるような世界観と、どんでん返しが決まりすぎたと感じた。
未来の話であり、今よりもAIが進化して生活の一部にガッツリと入り込んでいるような世界観なので、そこが細田監督の「サマーウォーズ」を想起させる。拡張現実というか仮想世界が、現実を侵食していくような世界。また、カラフルで細かい線が束なって現れる演出や、明るめの色が使われたファンタジーな物体はより、細田作品をリスペクトしているように感じる。
また、パラレルワールドをテーマの一つにしているように感じ、最後のオチが来たかと思われた時に起きる展開には、驚きを超えた何かがあった。詳しくはネタバレになってしまうから言えないが、もし今過ごしている世界が仮初のもの、作られたものだったら。あなたはどうするだろうか。
それを受け入れ世界に順応していくのだろうか。それとも、否定し一つの個として抗うのだろうか。この作品は、主人公達の姿や行動を通してそういったものを訴えかけているようにも感じる。
『Hello world』は、3Dメインに作られていて3Dの長所の一つである滑らかな動きが遺憾無く発揮された作品で、また背景や小道具には大変にこだわりを感じた。
しかし、やはり個人的には青春ラブストーリーなので表情の豊かさに富んでいる2Dで書いてほしかった感も否めない。好みも入るが作画を2Dに、そして世界観をもう少し簡潔にしたほうが受け入れ幅は大きかったのではとも正直思ってしまう。
とまあ、批判的なことも入れてしまったが世界観や内容としては、いい意味で裏切られた要素もあり面白いと感じた。
是非、これを読んで面白いと感じたら一度目を通して欲しい。好みは分かれるが刺さる人には刺さる作品だと思う。
最後に1つ。作品を見ながら3Dで作った理由を考えて欲しい。きっと結末で全てがわかるから……。