2025年9月25日から28日に幕張メッセで開催された「東京ゲームショウ 2025(TGS2025)」。テーマは「遊びきれない、無限の遊び場」であり、例年にも増してハードウェア/周辺機器にも注目が集まった。
そんな中、とくに注目を浴びていた展示の一つが、 XEO LAB による立体音響体験だ。このブースで展示されていたのが、
「XEO POD」と呼ばれるチェア型スピーカーシステムである。
多面体フォルムのチェア内部に 20 基のスピーカー を内蔵した 、立体音響を再生可能とする設計だ。
利用者はこのチェアに座るだけで、まさに音で包まれるような没入体験へと誘われる。XEO POD の構造は、チェア内部を囲むようにスピーカーを配置した“囲われた空間”という特徴がある。
実際に体験してみると、BGM や効果音、環境音が前後左右、そして上下方向から流れ込んでくるように錯覚し、音の“奥行き”や“位置感”が強く感じられた。ゲーム画面への視線が誘導されやすくなるよう、視界は前方に限定され、周辺視野のノイズが抑えられている設計になっているとのこと。 また、チェアには背面振動ユニットも組み込まれており、爆発や衝撃といった演出が物理的な振動としても伝わる。スピーカーの配置には工夫が凝らされており、チェアの“三角形の構造部分ごとに異なる設計”を施すことで、音のバランスを制御しているという説明を担当者から聞いた。
外観も印象的であり、近未来的な宇宙船を思わせるデザインを意識しており、スピーカー間に挟まれたライン照明(LED)もアクセントとなっている。
発売時期は 2025年春頃、価格帯は約 150~200 万円前後と見込まれており、一般ユーザー向けというよりはハイエンドな体験装置としての性格が強い。
このような XEO LAB の立体音響チェア体験は、TGS2025 の「無限の遊び場」というテーマにも合致していた。「映像」と「操作」だけでなく、「音響環境そのものを体験させる」ことを重視する流れは、ゲーム/メディア体験の次なる進化を示唆しているように思える。
ただし、課題も感じられた。
まず、1人用構造という設計上、同時体験人数は限定される。待ち行列が発生しやすい展示会場では、体験できる機会が限られてしまうだろう。 また、150~200 万円という価格は、一般家庭への普及を考えるとハードルが高い。設置スペースや電源・配線、音響調整も高度な環境が要求される可能性がある。さらに、長時間の利用耐性やユーザーによる微調整性の柔軟さ(音の好みによるカスタマイズ性など)も、製品化に向けた検討ポイントになるだろう。とはいえ、TGS2025で実際に音の渦に包まれる体験をした数少ない装置のひとつとして、XEO POD は強烈なインパクトを残した。将来的には、よりコンパクト化・コストダウン・複数人対応やシェア型利用(アミューズメント施設などへの導入)も視野に入れて進化していく可能性が高い。