「夏へのトンネル、さよならの出口」をレビュー
〜原作との違いを踏まえながら〜
・作品概要とあらすじ
第13回小学館ライトノベル大賞で「ガガガ大賞」と「審査員特別賞」をW受賞した八目迷先生の「夏へのトンネル、さよならの出口」(小学館「ガガガ文庫」刊)が原作。イラスト・キャラクター原案はくっかが担当。2022年9月9日に劇場アニメーションとして本作が公開された。
ウラシマトンネルーーーー そのトンネルに入ったら、欲しいものがなんでも手に入る。ただし、それと引き換えに……
似ているようでどこか対極的な主人公とヒロイン。ふたりは不思議なトンネルを調査し、欲しいものを手に入れるために協力関係を結ぶ。
・原作との違い
この作品は主人公・塔野カオルとヒロイン・花城あんずに焦点を絞った話になっている。原作でも登場人物が少ない作品だが、本作ではさらに焦点を絞るため他の登場人物の出番を大幅にカットしている。例えば、クラスメイトの川崎小春の出番が序盤以外全カットになっている点があげられる。原作ではもう少し出番があるキャラのシーンををバッサリとカットするという大胆なことをする事で主人公とヒロインにより焦点が向けられている。
また、ストーリーの流れ自体は概ね原作通り進んでいくのだが、微妙にシチュエーションが変わっておりその点での演出がすごく生きている場面が多いです。例えば、序盤で2人が出会い傘を貸すシーンがあり、原作では学校であるが本作では駅に変更されている。ここで貸した傘が伏線となって効果的な演出ができている。他には駅での場面で序盤は2人とも距離があったが物語が進むにつれ2人の距離が縮まっており「駅」という場所を使った演出がとても上手に違和感なく施されている。
登場人物の出番を大幅カットしたり、シチュエーションを変更したりと内容がグチャグチャになりそうなことをした本作だが、違和感なくストーリーが進行され約90分という時間にまとめられておりスッキリしたものになっていると感じる。また、原作との違いを探すのもこの作品の見どころの1つなので気になったら原作を読んでみるのもよいだろう。