ハートキャッチプリキュア
初代「ふたりはプリキュア」はすでにシンボリックな意味合い が込められているため、検索結果は多くヒットするものの、そ の後のプリキュアに関してはあまり伸びない結果になっていま した。
しかし、色々とネットでも話題になったハートキャッチ プリキュア。人気声優の水樹奈々さんが声を当てていたり、紅白 にAKBと共に出演したり、さらにはキュアサンシャインの作画 枚数が異常なことになっていたり、最後にはバトルアニメかのようなアクション。加えて、「人が死ぬ」といったプリキュア の中でも特に熱く、話題性に飛んだ作品だったこともあり子供 や親が一緒になって夢中になった作品です。
玩具売り上げを 見ても歴代1位の約130億円の売りげを誇っており、現在でも それを超えたシリーズはまだ無い。
スタッフインタビューでは「『どれみ』のような人情ドラマをプリキュ アでやってみよう」という考えで『どれみ』のスタッフに声をかけて集 めたことが判明している。
作品全体の基本コンセプトは「悩みを抱えた 一般人たちをプリキュアたちが解決する」であり、ここは『どれみ』と 共通する。
しかしプリキュアである以上怪物と戦うバトルシーンを入れ る必要があるので、「人間の悩みが怪物として具現化し、プリキュアた ちはその怪物を浄化することで相手の心も救ってあげる」という形でバ トルシーンと人情ドラマを共存させる手法がとられた作品。また、シリー ズで初めて主人公達よりも過去に活躍していたプリキュアの存在を明確 にしたことも大きな特徴である。
女児向けアニメシリーズであるプリキュアは小さい女の子達が良く観て いた作品だが、ハートキャッチについては、主に親がストーリーやキャ ラクターの感情の変化に大きく影響を受け大人も楽しんで観ていた作品だ。
プリキュアシリーズでありながらも『おジャ魔女どれみ』の精神的後継 作のようなところがあり、従来とは異なるファン層を開拓した。
また、 水樹奈々が主演に起用されたことで、放送前から大きな注目を浴び、キュ アムーンライト対ダークプリキュアの死闘で幕を開けた第1話で視聴者 の度肝を抜いた。
本作では、プリキュアと悪の組織「砂漠の使徒」との戦闘が、数百年に渡り繰り返されていることが明言されており、従来 ではありえなかった高校生や高齢者が変身するプリキュアも実現。更に テレビシリーズでは初となる「プリキュア」を名乗りながらも終始敵で あったプリキュアも登場した。
プリキュアの使命が世代を超えて受け継 がれるという設定は、以後の作品にも引き継がれていった。さらに本作では従来のシリーズの定番であった「異世界」の概念が排除 され、プリキュアや妖精たちは人間界発祥の存在となっており、物語も人間界のみで構成されている。
劇場版もテレビシリーズには登場しない 異世界へ冒険する内容では無く、現実世界のパリを舞台としている。そのような世界観のため「本人の意思とは無関係に決め台詞を口走り、ポーズを取ってしまう」という従来のシリーズでは定番だった要素も本 作では殆ど除外され、名乗り、ポージング、技名なども変身者自身が考 案するものとなった。
プリキュアシリーズの戦闘演出は「強さ」や「迫力」と同時に、女児が 好むような「華やかさ」をどのように描いていくのかが永遠な課題とし て存在するが、この点については魔法や超能力的な攻撃演出が多い。
本作では敵にトドメを刺す必殺技の他にも多様な特殊技があり、異能力バ トルめいた演出が気兼ねなく行えるようになったきっかけでもある。
一 方で、プリキュアたちが再起不能な程の大ダメージを受けてしまうと変 身状態が解除されるという演出がある。これまでのシリーズは強制的に 変身前の状態に戻されていたが、本作は変身コスチュームが取り払われ 変身中の衣装になる、いわゆるアーマーブレイクという手法が取られて いる。
若干きわどい演出ともとらえられかねないが、このおかげで「も う戦えないくらいに追い込まれた」という戦闘不能状況を痛々しい表現を用いることなく描くことが可能となり、シリーズの中で初めて「プリ キュアが勝てないライバルと一年を通じて何度も戦う」というシチュエー ションを作れるようになった等シリーズ作品の中でも特異点と言われる ほど異例な演出が多かった作品でもある。子供達だけではなく親世代の 大人をも引き込むほどの衝撃を与えた作品だからではないかと思う。
朝日放送のプロデューサーは原点回帰を意識して初期メンバーは2人にしたと語っており、またヒットさせる為に前作のダンスに続き女児が好 きなものという意図で花とファッションの要素を取り入れ、作中に登場 した花言葉を紹介するシーンも含まれている。
タイトルの『ハートキャッ チプリキュア!』には子供達の心を掴む事と心の大切さを知る物語である事の二つの意味で名付けられた。こうした要素は作品の内容にも度々 反映されている。
物語は各話人間の心情を扱うものが主軸になっている 他、敵組織が作り出す怪物も人間の心の負の部分から作り出されている。徹底したコンセプト設定と女児が憧れる存在をつくり、幼少期から人の心に対して考えられる機会を身近なアニメ作品でつくる事でプリキュア をきっかけに相手を尊重して優しい心を育ててほしい。そんな想いで作 られた作品だとおもいます。
結果的に大人の心も掴んだ模様。